ながされて無職

無職になった50代女性一人暮らし。ずっと働かないわけじゃない。

2件めの歯医者にしました  ーサービス業のみなさん、落ち込む必要はないかもよー

みなさん、歯医者さんは好きですか。

私は、結構好きです。

行くまではものすごーく面倒なのだけれど、家を出てしまえばちょっと楽しみ。

本日は無職が歯医者さんに行った話です。

 

歯医者がなぜ好きなのか

歯医者さんって「歯のエステ」みたいな気がしませんか?

全てを人にゆだねる気持ちよさ。こっちは寝てるだけで時間がたてば仕上がっているという楽ちんさ。

特に好きなのが歯石を取ってもらうとき。あのゴリゴリ、いかにも余計なものを取ってきれいにしてる感じがあるよね。快楽!

そして、全治療終了後の「すっきり片づきました」感(家の掃除の爽快感と似ている)、及び「やり遂げました」の達成感(自分は何もしていない)。

 

久々の歯医者

1.きっかけは定番の「詰め物が取れました」

ある日、歯磨きをしていたら、口の中から小さい硬いものが出てきました。白っぽいコレなんだろ?舌で触ると奥歯に深いミゾが・・・。

あー、やっちゃったね。

 

小さい白いものはおそらく奥歯に詰めてあった何か。

あー、歯医者行くのかー。めんどくさーーーー!!(好きな割にこの行くまでの面倒さは何なのだ)

無職になって一年あまり。引っ越しでなじみの歯医者から離れたり、医療費をけちったりしていたこともあって、歯科検診にもずっと行っていませんでした。きっと歯石もたまっている。

めんどくさいけどしょうがないなー。歯医者探して行くかね。やーだなー。

2.ウキウキの初診察

「あー、ここすんごく評判いいな。星いっぱい付いてるよ。」

ネットで口コミ評価の良さそうなところを探し、予約を取ります。

予約さえ取ればこっちのもの。もうすでに、久しぶりの歯医者通いの高揚感もあって、心ウキウキ。

予約当日、初めて訪れた歯医者はピカピカ。そうなんです。この、歯医者さん特有の明るくてピカピカのところもイイのよね。

 

診察前のアンケートを記入。

うーん、「気になるところのみ治療したい」「全て治療したい」どちらにするかな?お金のこと考えると「気になるところのみ」だけど、どっちみちいずれ「全て治療」しなくちゃならないなら無職でヒマな今が良い気もするし・・・。ふたつとも〇つけちゃえ!

 

呼ばれて診察室へ。

まずは歯科衛生士さんによる歯茎のチェック。それがですね、この歯科衛生士さん、やたら患者(私)の近くに顔を寄せて話すのだ。「ここに歯垢が残っています、こういうふうに磨いてください。ここはよく磨けています、この方法で続けてください。」などと。

ありがたい。熱心に教えて下さるその心意気はありがたいのではあるが、このご時世、いくらあなたがマスクをしているとはいえこの距離で話すのは感染予防的にいかがなものか。大口開けた私は、できる限り息をこらえ、「分かりました」のうなずき代わりに目をぱちぱちさせるしかなかったのであった(首は動かせない)。

3.衝撃の「治療のススメ」

歯医者さん登場。若い男性医師。歯と歯茎のチェックやらレントゲンやらいろいろ時間をかけて診察あり。その後待合室へ一旦戻り、再び呼ばれて今度は別室へ。なんと、この歯医者、治療前に「カウンセリング的なもの」があったのですよ。

「検査の結果をご説明します。その後治療の方向などを一緒に決めていきましょう」とのこと。ご丁寧なことデスネ。

「今回、詰め物が取れたのはこの親知らずです。もともと虫歯になっていたのなら歯磨きがしにくいのでしょう、これ、抜いた方がいいと思います。」

えっ?いきなり抜歯のススメですか?

確かに、その親知らず周辺は体調が悪いときなどによく歯肉炎になるところではあった。でも、これまでいろいろ歯科にかかってきて、親知らずの抜歯を勧められたのは初めてだったので、大いに困惑しましたよ。

 

「この下の歯も親知らずです。磨きにくいので残しておくと今後周囲の歯茎や隣の歯に影響を与えそうなので、抜くといいと思います。」

なんですと?

上はまだしも下はまったく腫れなどもないのに?それも抜くの?

私、大いに狼狽。

「えっと、えっと、あのー、もし抜くとかみ合わせに影響があったりしないんですか。」

「ないですね!普通は親知らずがない本数の歯で食べてるわけですから(キッパリ)」

 

その後も先生の説明は続いた。

ここは色からして詰め物の下が虫歯になっていそうだ、こことここの詰め物はだいぶん古く歯茎が下がり歯が見えてきているので直した方がいい、この歯が削れてきているのでマウスピースを作った方がよい、などなど。

あー、なんか、抜いたり削ったり古いの作り直したり新たに作ったり。このままだとえらい大規模工事に着工することになりそうだよ。

私、「詰め物直して歯石取って、プラスα」くらいの覚悟で来たのに・・・。

 

あまりの急展開に付いていけずぼーっとしている私に、若い医師はこう言いました。

「決めるのはエンドウさんですので、次回までに考えてきて下さい。でも私は親知らずは抜いた方がよいと思います!(再びキッパリ)」

・・・ダメ押し、ね・・・。

 

説明はやっとこさ終了し、最後に、こう告げられました。

「次回来られるときまでに、私が『治療計画書』を作成しておきます。次回、それをもとにどうするかを一緒に考えましょう!!」

はあ・・・これまたご丁寧なことで・・・。

 

『治療計画書』なんて出されちゃって、いよいよ逃げ場がなくなりそうデスネ。

そして、次回また「今後のこと」を一から話し合うのかい?治療自体が始まるのはいつになるやら。長く通うはめになりそうデスネ。

4.カウンセリングで分かったこと

丁寧なカウンセリングでわかったこと。

・このお医者さん、「抜きたい」ヒトだな。(現在親知らず2本がターゲット)

・このお医者さん、「できる治療をみんなやりたい」ヒトだな。(例えば「古い詰め物許すまじ」の雰囲気とか)

の2点です。

5.次回の不安から

もちろん、私はお医者さんの提示をを断ることができる。初心貫徹「親知らずの詰め物部分の治療と歯石取り」だけで済ますことも選択できる。

しかし、このお医者さんの「抜きたい」「完璧に治療したい」強い圧が乗せられた「治療計画書(そこには抜歯をはじめ治療の選択肢がズラリと並んでいるばずだ)」を次回提示された私は、それらのほとんどをキッパリ断り、自分の選択を告げられるだろうか。あまりにも目の前のお医者さんの熱意とかけ離れた選択を、私はできるだろうか。

 

カウンセリングの部屋を出て、清算。事務の人に促されぼんやり次回の診察日を一週間後に決めました。

そして次の日の朝一番に、予約の取り消しをしました。「えっと、次の診察日は、予定が決まったらこちらから連絡します」と。

そう、その歯医者さんから逃げたのでした。ごめんなさい。

ああ。せめて、どうかあの熱心な先生が、「治療計画書」は予約が決まっている人にしか作らない、ちょっと先延ばし体質の先生でありますように(テマヒマ増やしてすみません)。

 

2件目の歯医者へ

その後、しばらくして2件目の歯医者へ。

診察前のアンケートで「親知らずについて相談したい」と書いておきました。

40代後半くらいの歯医者さん。

 

この先生、とにかく手際が良い。

歯と歯茎の状態の検査、レントゲン、現状の説明が一気に進みました。

「詰め物が取れた親知らずは、詰め物部分を直してもうしばらくは保たせることもできます。この親知らずの隣が軽い虫歯になっていることと支えるあごの骨が下がってきていることから、いずれ抜くことになるかもしれません。

ま、急に言われても困ると思いますので、次回までに考えてきてください。とりあえず、詰め物部分の応急処置をしておきましょうか。」

 

「先生!抜いちゃってください!たまに歯茎が腫れたりするの、いつもここらへんからなんです!先生の説明をうかがって大変よく分かりました!ずっと考えていたんです(本当か)!決心がつきました!(前のめり)」

「・・・そうですか。わかりました。確かに、歯が磨きやすくなるので、予防的に抜いておくと良い状態が保てますね。」

「はいっ!」

 

上の親知らずの抜歯は次回に決まり、その日は、親知らず周辺の歯石を取ってもらい終了。「歯石を取ることで口中の細菌を減らし、次回の抜歯に備えます」という先生の説明に大きく何度もうなずいたのでした。

 

結局、その先生の見立てでは下の親知らずは抜かなくて大丈夫とのこと(ほっとしました)。その他2か所くらいを治療予定。古い詰め物はおとがめなしとなりました。

 

歯医者さんでの出来事からサービス業を考える

1.なぜ2件めの歯医者さんで親知らずを抜くことにしたのか

2件めの歯医者さんのほうが、「歯を残す治療方針」だと感じられたからというのももちろんあります。また、「手際よくやってくれそう」というスピード感が自分に合っていたのもあるでしょう(逆に1件めの歯医者さんのように、書類などを作ってきっちりやってほしい人もいるはず)。

 

しかし、それだけではなく、「2度めの説明だったから」という理由も大きいと思うのです。考える時間やこれまでのことを振り返る時間があった、そのうちに覚悟が徐々にできてきた。そうした状態で2人めの医師の話を聞くため、すんなり抵抗なく気持ちに入ってきたわけです。

そして、もう一つ、「二人のお医者さんに聞いて満足」という理由もあったのでしょう。一人めだと安心できなくても、二人めだと「ああ、やっぱりそうなのね」と腑に落ちる。

 

なので、一件めの歯医者さんで決心できなかったのは、その歯医者さんの「力量」がどうこうという問題ではないのです。たまたま患者の私に準備ができていないタイミングでその歯医者さんと対面したことが大きかったと思うのです。(抜歯に前のめりなところは別にしてね)

2.サービス業のみなさん、落ち込まなくていいこともあるよね

先ほど、偉そうに上から「力量」なんて言葉を使ったわけですが、サービス業に従事していた私は、昔から「仕事の成果=仕事の力量=自分の価値」に換算してしまうところがあるのですよ。多分。

「仕事の成果が出ない→自分には力量がない→自分には価値が無い」と。

日々、成果を上げることに躍起になっているわけです。それで自分の価値が上がったり下がったり。それでもって調子に乗ったりひどく落ち込んだり。

そして成果が上がらないことが続くと仕事を辞めたくなるのです。だって自分に価値が無いなんて辛すぎるから。

 

でも、よく考えるとサービス業って、相手あってのもの。

その相手がどういう状態か分からないまま、我々は接するわけです。

例えば、もんのすごいクレームがきたとしましょう。自分の態度や言葉がガマンならなかったらしい。もちろん自分に至らないところがなかったか振り返る必要はある。

しかし、そのお客さんがどういう気持ちと状態で自分と接したかは分からないわけで。もしかするとこれまで何回もいやな目にあって、爆発寸前の状態できたかもしれないのです。初めから無意識に「言ってやりたい!」気持ちで来ているかもしれないわけです。

 

相手があることに対し、「成果を上げたい、努力すれば上がるはず」っていうのは、ちょっと違うし、自分の力量ともあまり関係がないかもしれません。

成果が上がっても下がっても、相手が「たまたまそういう状態だった」というのが要素として大きいのかもしれません。

 

なので、サービス業において落ち込むことは多いけれど、その必要は案外少ないかもしれないなあと、仕事を離れた今は思うのでした。仕事を離れた今はね。

 

はあ、今後仕事を探して就職するにしても、こんなことあんなこといろいろあるんだろうなー。はあ、私にできるのかしら・・・。

とにかく親知らず抜歯してから考えよう(いつもの棚上げ)。