ながされて無職

無職になった50代女性一人暮らし。ずっと働かないわけじゃない。

外食の楽しさに潜む、無職の私の転職癖との共通点

やってしまったーーー!

無職の私、外食しちゃいましたよ。収入ゼロなのにね!

 

春の陽気に誘われて 

その日は月に一度の日用品の買い出し日。

無収入の私は、自らに強く言い聞かせて買い物に出るようにしている。「生活に必要なもの以外は買うべからず」と。

そこでその日も「買い物メモ凝視、わき目も降らずレジへGo」作戦を決行、視野15度で買い物を素早く済ませたのだ。

この作戦でないと、目は上下左右にぐりんぐりんと引かれ、甘いもんやら辛いもんやらすっぱいもんやら、いろいろ目に入ってくるんだよ。ちなみにウサギは視野が360度あるそうだ。私がウサギだったら今ごろ破産しているね。

 

「ふふん、やればできるのだよ。」

無事作戦は成功を収め、ほっとして店を出るとそこには暖かな日差し。街ゆく人もその表情は一様にやわらかく足取りも軽やか。草木が芽吹くように商店街の一軒一軒が以前より活気づいていくのを感じる。

ああ、すっかり春だねえ。

 

そんな街の様子を眺めながら家路へと歩を進めたそのときであった。

一軒のお店の前の女性と目が合った。その女性は微笑みながら私にこう言ったのだ。

「ランチ、やってます」

 

「うっ・・・」

私がうめいたのには訳があった。

そのお店が、ランチにおいしそうな魚の定食を出すことを、私は知っていたのだ。お店の前の写真看板やらのぼりやらでアピールしていたのをチェックしていたのだ(チェックしている段階ですでに店に取り込まれているよ)。

 

私の足はすでに凍り付いたようにその場で動かなくなっている。

「おススメは〇〇定食です」

店の女性の「〇〇定食」がうまく聞き取れない。なぜならすでにおススメを聞くまでもなく私は入店する気満々だったからなのだ。

 

促されホイホイと入店。

店員さんたちはなぜか皆、地元の野球チームのユニフォームを着用。

「好ましいではないか」

そう、すでにプロ野球はキャンプも終盤、オープン戦も近い。

球春到来。店員さんも春の訪れの喜びを全身で演出しているのであった。

 

カウンター席に座る。厚いテーブルと木の椅子が心地よい。

メニューから「さばの塩焼きと刺身定食」を選び機嫌よく注文。

 

「おまたせしました~」

陽気な声とともに運ばれたお盆には、お皿がぎっしり。

じゅうじゅうの塩焼きさばの四角いお皿、輝くお刺身が2品乗った鉢、色鮮やかなほうれん草と人参の胡麻和え、ほかほかごはんに豆腐の味噌汁、黄色いお漬物。

なんと豪華絢爛たる品揃え!自分じゃこんなに用意しないよねー(料理あんまり好きじゃないの)。

 

まずは、お刺身。このつやつやの桜色のはビンチョウマグロかな。こっちのオレンジのはサーモン。回ってる寿司屋でどちらもよくお目にかかっているので多分合ってる。

「うんめ~~~!

久しぶりの生のお魚(冷凍)、新鮮でおいしいよ~(解凍)!」

 

続きまして、さばの塩焼き。まだあつあつ。

いざ!

突然ですが、骨付きの魚を食べるときって「いざ!」という気持ちになりませんか?勝負を挑む感じ。「いざ、手合わせを。このワタクシが、一片の身も残さず骨だけにしてあげましょうぞ。」食べ終わって魚に「お見事。大儀であった。」とほめられたい。

箸にその身はほろりと崩れるも、口に入れればしっとり広がる脂のうまみ。

「これおいし~~~!」

 

家でもたまーに魚を焼きますが、フライパンにくっつかないアルミホイルを敷く方法。狭小ワンルームには魚焼きグリルや焼き網など、魚専用のものに割くスペースなどないのだ(IHだし)。

「う~ん!アンタ香ばしさと身のふっくら感が違うよ!絶品だよ!」

 

そんなこんなで、あの皿この椀全て堪能し、おなか一杯気持ちも満腹になった私は、会計をすませお店を出ました。

 

本日の外食費、1640円也。うっ。

外食は非日常なのだ

1.我が家の家計に外食費は負担

外食費、1640円。

えーっと、一週間の食材費(米・調味料を除いたもの)の予算が、2000円で・・・と。

しまった。やっぱりやってしまったのね。一週間分に近いくらいの食材費を一食で食べちゃったのね、アンタ・・・。

2.なぜ外食が楽しいのか

しかしなぜ、こんなに私は外食が楽しいのか。

お腹を満たすだけなら、家で作ればよい。人の作ったものを食べたければ持ち帰りでもよい。例えばお取り寄せのミールキットを使って家で作るのもあるが、それよりも外食は満足感が高いと思うのです。

 

外食の楽しさ、それは「非日常感」にあると思うのですよ。

お店の見た目の物珍しさから、普段食べられない料理、見た目も美しく、味も珍しくそして絶品。

3.私の転職癖との共通点

昨今、「緊急事態宣言中に国会議員が夜に銀座のクラブへ!」「飲食店で騒ぐ若者!」などとニュースになっています。良くないことは確かなのだけれど、私は共通したところを自分の中にも見てしまうのだ。

日常が続くことに我慢ならなくなって、非日常のレジャーなんかを求めてしまう体質ってあるよなあ、と。

 

そしてまた、この「普通の生活だけでは飽きる、それが続くと我慢できなくなる」ところが、自分の引っ越し癖や転職癖のなかに、多分に要因として含まれるだろうことに「なんかイヤーなもの」を感じるのだ。

 

「ちょっとー、外食一つで転職の話につなげるなんて、そんな大げさな・・・」とお思いの方。

例えば「買い物好きな人」と「買い物依存症の人」との一番の違いは何か。

買い物も自分の予算の範囲内で楽しむのなら良いのだ。経済的・社会的に不都合が出るにも関わらずやってしまうことが問題なのだ(思わず下線を引いたよ)。経済的にも破滅が分かっていて、社会的な信用なども失うことが分かっていて、それでも買い物がやめられないのだよ。

依存症のことを考えるときに大事なのは、そのことによって本人や家族が苦痛を感じているのかどうか、生活に困りごとが生じているのかどうか ということです。

出典:厚生労働省 依存症についてもっと知りたい方へ

緊急事態宣言中の夜の街で国会議員が会食したり飲んだりしていると、世間からどう言われるか、どう責任を取らねばならないのかは予測がつきそうなのに、行ってしまう(依存症だと言っているのではありません、でもその後本人も家族も困るよね)。

私が仕事を辞めると老後資金が無くなる、老後まで待たずに困窮してしまうのがわかっている。なのに次々と辞めてしまう(続けられない何か大きな理由があるのでなく、いやになり我慢ならなくなるのだ)。

外食も、予算に余裕がある人が範囲内で楽しむのはよいのだよ。一週間2000円の人がやっちゃうところが問題なのだ。

 

怖い、怖すぎるよ。

 

ということで、外食の楽しかった思い出は心の中に輝きとして残しつつ、「今後はもうちょっと考えよう」としょんぼりした、春なのでした。