ながされて無職

無職になった50代女性一人暮らし。ずっと働かないわけじゃない。

クローゼットの「50代就活スーツ」

みなさん、プロレスで「チョップ」といえば誰を思い浮かべますか。

私はジャイアント馬場。いわゆる脳天からの「馬場チョップ」でなく、水平に胸を打つアレ。幼少のころ、祖母とプロレス中継をよく見ていたのだ。赤いパンツが目に焼き付いている。(でも好きだったのは少し後のミル・マスカラス。技が華麗で美しかった。)

 

私が住んでいるワンルームにはクローゼットがついています。

その幅40㎝。ちょうど私の肘から指先までが40㎝。そう、私が水平チョップしたときの腕の長さなのです。

狭い。非常に狭い。しかし、この16平米狭小ワンルームに、知恵を絞りだし何とかクローゼットなるものを設置してくれようとした部屋の設計者に、心から敬意を表するものである。

ありがたく使わせていただいております。実際、ものすごーく役に立っているのだ(部屋に新たにハンガーラックなど置くスペースはない)。どうしても畳みたくない服ってありますよね。

掛けられるハンガーはおよそ10本。選びに選んだ服を大切に掛けているのであります。

 クローゼットにある痛恨の2着

1.選ばれし服

40㎝クローゼットに掛ける服を選ぶ基準としては、

①しわになってはいけない(気楽にアイロンがかけられない)

②よく使う

この2つを兼ね備えたものにしたい。

ところが、実際はそうはいかないのです。

一番めはコート。これは①②を兼ねているのでよいでしょう(夏は使わないがどうしようもないヨ)。

問題は次。早々と選出されたのが、なんと「就活スーツ」なのです。それも「春・夏用」「秋・冬用」と2着ある。

この2着が、私の場合問答無用でそこに掛かることになるのです。

2.就活スーツの出番は

私は、これまで何度も転職を繰り返しています。そして近い将来使うことがはっきりしているのです(お金がなくなるから。でもほんとは使いたくない、ああ、仕事したくない・・・)。もしかしたらそこも辞めてさらにまた使うかも・・・。

ということで、わが2着の就活スーツは「使っていないのに結構使いそう」という矛盾をはらんだ立ち位置にいる服なのです。現にこれらはここ数年で何度か出番がありました(転職&転職)。それに伴い履歴書の写真もこれらを着て撮っている。在職中はたまにある研修などにも着ていく。

現在のおのれの状況を顧みるに、「いや、早めに使うべきでしょアンタ(早く仕事探ししろ)」というところまで、のし上がってきている服なのでした。ああ。

 

今、その2着はあえて透明でない洋服カバーを掛けられてクローゼットの端に身をひそめています。そう、持ち主はそれでも見たくないようなのです。しかし、いかんせん幅40㎝のスペース。扉を開けるたびにそれらは否が応でも目に入るのでした。

スーツのレンタルはどうなのか

1.ネットで探してみました

私は以前、礼服(喪服)をネットでレンタルしたのですが、そのシステムが大変気に入り、「もう一生レンタルするもんねー」と決めているくらいです。

そこで、スーツについても探してみました。

・・・うーん・・・。

借りることはなさそうです。

 

就活スーツはあるのですよ。しかし、全て「若いヒトが着るスーツ」なのです。あのスーツに50代のこの顔と体形?どう考えても合わない。ちぐはぐなヒト感満載。

いわゆるビジネススーツから少し離れて、それでも就活に仕えそうなものも探してみましたが、今度は「子どもの入学式用」の雰囲気のものばかり。そのフェミニンさは年代と目的には合わず。

2.レンタル会社のターゲットは

世は変化し、人はいろいろな働き方を求めるようになり、50代での転職活動は少なくないでしょう(そう思いたい)。心機一転50代で初めての就職活動もあることだと思います。

しかし、会社の多くが求めるのは若い人材であることも事実。

レンタル会社としても、まずターゲットにするのはボリュームゾーンの20~30代でしょう。そう、喪服とは違うのだ。「就活といえば若者」の意識はいまだ世間の常識なのだ。

ああ、やはり50代の需要は少ないのでしょうか。いろいろがっくり。

50代の就活スーツは

1.50代とはどのような年代か

私はふわふわと地に足がつかず、勤めたり辞めたりしているわけですが、本来社会にいる50代はもっと堅実なイメージ。50代はどうであることを期待されているのでしょうか。

 

おそらく、様々な経験を重ねどんな状況にも柔軟に対応、人材育成やマネジメントも必要ならば可能、といった年代なのでしょう。

転職ともなればさらに求められるものが加わる。若い人に教えを請う謙虚さ、即戦力となるスキル、すぐに辞めない精神の強靭さといったところでしょうか。

 

こりゃだめだ。これってもう別人。こんなの求めてる会社とは合わないネ(なぜ上からなのか)!

面接で無理してもその後ろくなことがない気がする。そしてきっと初めからバレてる(笑)。

 

ということで、理想は横に置いておき、ダメなところも良いところもある普通に働きたい50代としてスーツを探しましょう(バリバリのキャリアスーツを中身がないのに求めるところだった、あぶないあぶない)。

2.就活スーツ、私の場合

私はいわゆる一般的な「黒い就活スーツ」はやめました。次の3つを念頭に探しました。

①若くならない・甘くならない

②紺かグレー …黒は若者が着るとよいが50代では安く見える(気がする)。間違うと喪服に。

③体形が出ない …パンツははかない、尻がみっともなくて。ウエストきっちりマークも厳しい、腹の肉が目を引くから。

 

いろいろ試着を繰り返した結果、「ワンピーススーツ」(っていうのカナ?)になりました。

ほどほどのタイトスカート状のシンプルな半袖ワンピース(+しめつけすぎないベルト)にかっちりしたジャケットを合わせたスーツ。これが一番しっくりきました。

 

「コレ!」というものが見つかって持っていれば安心感があります(使うことが大事なのだよ、キミ)。

スーツの出番は

よし!スーツもある。写真もとった。あとは就職に向けて動くだけ。

はああ。それが一番の問題なのだ。仕事・・・したくない・・・したくない・・・。

 

手を通すことなく、しかし捨てることも決してできないそれらは、今日も目をそらす持ち主を責め立てるでもなく、静かに端正にクローゼットの端に収まっているのであった。(その一方で預金通帳からは、就職活動を雄弁に激しく勧められている)

 

はああ。こんな自分に水平チョップをお見舞いしたくなるよ。

それともこのスーツを身にまとい、コーナー最上段からミル・マスカラスのごとく華麗に羽ばたくときがいつの日かやってくるのであろうか。